入居者の募集を開始する前に、物件の契約条件を検討して決める。この条件次第で入居者がすぐ決まることもあれば、空室が続くことも。募集活動もこまめにチェックしよう
入居者募集にあたっては、貸主が募集前に下記のことを決めておかなければならない。不動産会社に相談すれば、プロならではの適確なアドバイスも得られる。
査定額などを踏まえて貸主が家賃を設定する。希望する家賃のままでは貸し出しても入居希望者が現れない場合も生じるので、周辺相場などについて不動産会社に相談してみよう。相場より高いと入居者がなかなか決まらず、空室期間が続くことにもなりかねない。
アンケート結果では、下図のように不動産会社のアドバイスで金額設定した人が約6割だった。また、想定していた額と同程度だった人が6割強と多数派となっている
■家賃を決めた際のポイント(複数回答)
■希望家賃と実際の家賃の違い
また、季節によって需要の多い時期、少ない時期がある。一般的に家を探す人が多いのは1月中旬から3月中旬まで。4月から8月、年末などは少ない傾向にある。需要が高まれば家賃が多少高くても入居希望者が現れるし、需要が少なければ、家賃を下げないと入居者が決まらないということもある。季節的な変動要因を知って、家賃や契約条件を決めることも必要だ
管理費(共益費)の考え方や習慣は、地域によって異なることもあるので、その地域性を考慮して設定する。管理費は基本的に貸主が建物(アパートやマンション全体)の共用部分を管理する費用(共用部分の光熱費や清掃費として使う分)として受け取る収入。管理費は、光熱費や清掃費などの必要経費を基に貸主が決める。マンションの場合は、マンション管理組合が委託している管理費を基にして貸主が決める。一戸建ての場合は、建物や敷地の管理は入居者が行うことがほとんどなので設定しないことが一般的。家賃に含める・含めないも地域で異なるが、貸主の意向で決めてもよい。管理費を家賃に含める場合、所得税の確定申告に必要な帳簿付けなどが多少シンプルで済む
敷金や礼金(地域によって名称が異なる場合がある)も地域性を考慮して設定したい。
敷金は家賃滞納や、入居者の過失・故意による破損で修繕が必要になった際の保証料で、家賃の1~2カ月分が一般的。貸主は入居者が退去する際に、入居者責任による原状回復費を徴収した残金を返金する(「敷金返還に備えて知っておきたい「原状回復ガイドライン」参照)
礼金は賃貸住宅の供給数が非常に少なかった時代から続く習慣で、貸主が入居者から受け取る。家賃の1~2カ月分程度としているケースが一般的だったが、ここ数年の賃貸住宅供給数の増加や消費者意識の変化に伴い、入居者を獲得する手段として、礼金をゼロにするケースも増えている
一般的には契約期間は2年間で、引き続き住む場合は更新してもらうというケースが多い。期間は2年でなくてもよい。ただし、契約期間を1年未満にする場合は、期限に定めのない(更新のない)契約となってしまうので注意が必要だ。
期間限定の契約形態である「定期借家契約」の場合、自分が持ち家に戻るタイミングが決まっていれば、その時期に合わせて契約期間を決めると、「転勤先から戻ったときにタイミングよく持ち家に戻れず、別に仮住まいをしなくてはならない」ということがないので安心だ。先々の予定を把握した上で期間を設定しよう
火災や水漏れを起こした際に備えて、入居者の損害保険への加入を条件とするケースが多い
一般的には、入居者の身内を連帯保証人として契約するが、保証人がいない場合には保証会社を入居者負担で利用してもらう方法もある。保証会社利用の可否もあらかじめ決めておくとよい
駐車場や駐輪場の使用条件、ペットの飼育の可否、禁煙といった部屋の利用条件など、特別に決めたほうがよい条件を明確にしておく。マンションについては、管理規約に基づいて居住条件を設定する必要があるので確認しておきたい
以上の条件を設定したら、不動産会社を通じて入居者を募集する。基本情報(築年数、間取り、設備の特徴、交通等)や物件の魅力を入居希望者にうまく伝えてもらえるように、不動産会社と打ち合わせをしておくとよい。持ち家から退去するまで時間がある場合、貸主居住中でも、入居希望者の見学がOKかも決めておこう。貸主が退去した後は、入居希望者がいつでも見学できるように、不動産会社に鍵を預けておくケースが多い。
募集開始から時間が経っても反響が少ない場合は、募集活動を見直す必要がある。具体的には、家賃など入居条件を見直す・リフォームなどで物件の魅力を高める・不動産会社に宣伝広告活動を強化してもらうなどだ(詳細は「『空室で収入ゼロ』を防ぐための3つの方法 」を参照)。
賃貸経営を賢く行うためのノウハウや豆知識、成功のためのコツなどをご紹介いたします。
文/金井直子 監修/中村喜久夫(株)不動産アカデミー